ぴあけあら

双極症当事者(ピア)で、統合失調症の当事者家族(ケアラー)。日々の記録です。

 本サイトはプロモーションが含まれています

当事者家族になって占い師さんと仲良くなりかけた話 その1



 

当事者家族としてのあれやこれやは、父のときもつらかったですが、自分の子どものときのほうがもっともっとつらかったです。

わたし自身もうつ病で治療を受けていたのですが、ほんとにダメダメな病院で…。

あんな病院あるんだ というくらいなものでした。

子どもはドツボにはまり、わたしもどん底でした。

 

↓ 地獄のA先生とB先生の話です

peer-carer.hatenablog.com

 

 

今回お話しする出来事は、テレビでもネットでも本でも映画でも漫画でも、ほんとによくあるテンプレです。

 

まさか、実際に遭遇することになるなんて…。

 

これは、当事者家族になったからこそ、経験できたことかもしれません。

今では笑えるネタなので、のびのび書こうと思います。

 

よろしければ、お付き合いください。

 

目次

 

 

 

「いいひとがいる」

 

誰からだったか、ある情報を聞きました。

 

「困ったときにちからになってくれる、すごくいいひとがいるのよ」

 

やばい。

普通の精神状態なら 絶対に頭の危険信号が鳴り響くところです。

 

でも、わたしは、そのとき普通ではありませんでした。

 

まあ、ちょっぴりは「怪しいかも」とは思いました。

 

ですが、

「行くだけ行ってみたら?」

との誘い文句に まんまと釣られてしまいました。

 

 

そう。行ってみるだけ。変だな と思ったらやめて帰ってくればいいし。

 

 

家族が助かるなら、とにかくなんでもやろう

 

と藁にも縋る思いでした。

 

とにかく助けて

 

 

謎の占い師

 

話によると、ちからになってくれるというひとは、占いをする女性だとのこと。


 

お金をとって占っているわけではなく、趣味というか、人助けとして、その人が気が向いたときに占うのだ という話でした。

 

場所は、国道から少し入ったところにある喫茶店。

占い師さんの旦那さんがマスターだそうです。

 

その店で

 

運がよければ彼女に会える

 

と言われました。

 

この「運」という言葉にも、神秘を感じ、ますます救いの主のように思えました。

 

助けてください



喫茶店

 

真夏のうだるような昼間。

バスを乗り継ぎ、汗びっしょりになってようやく辿り着きました。

 

住宅はまばら。

その店の周りだけ、背丈ほどの草がぼーぼーと生い茂っていました。

道は舗装が途切れかかっています。

 

草の向こうに、煉瓦造りの建物が見えます。

あそこだな と草の中を進んでいきました。

突然目の前がひらけて、くすんだ赤い屋根の、煉瓦の洋館が現れました。

 

 

本当にこんな感じの家でした

 

店の看板は見当たりませんが、「〇〇コーヒー」というコーヒー問屋のスタンドが置かれています。

きっとここだ、とドアを開けました。

 

扉を開くと、ドアの上についているベルがカランコロンと鳴りました。

 

中は、まるで昭和の純喫茶。

薄暗い店内。

磨き込まれた一枚板のカウンター。

並んでいる椅子は、赤いビロード張りです。

カウンターの向こうには、カップボードがあり、ヨーロッパ調のコーヒーカップが並んでいました。

 

店内は広く、テーブル席は、10席以上はありました。

 

それぞれ重厚な木のテーブルに、背もたれの高い、やはりビロード張りの椅子が四脚ずつ。

所々に、天井からランタンのような照明が吊り下げられていて、弱いオレンジ色の光がぼんやりと室内を照らしていました。

 

もっと暗い店

 

「いらっしゃいませ」と静かに店の奥から出てきたのは、初老の男性でした。

白シャツに黒ベスト、黒いスラックス、胸元には黒い蝶ネクタイ。

うっすらと優しそうな笑顔を浮かべています。

 

 

ああ、この人が噂の占い師の旦那さんなのだろうな

 

奥さんは占い師



「どうぞお好きなところへおかけください」と言われて、窓際のテーブル席へ。

飾り窓には、小さな花瓶にバラの花が生けてありました。

 

すぐに占い師さんに会えると思ったのに、、、、何か頼まないといけないんだろうな

 

とりあえず、ブレンドコーヒーを頼みました。

 

わからないときは、とりあえずブレンド



 

マスターは慇懃な様子でコーヒーを運んできてくれました。

飲めもしないコーヒー。

味も香りも分かりません。

黒い液体を啜りながら、カウンターの向こうに目を凝らしました。

 

ですが、件の人は出てきません。

 

というか、店内には、わたしとマスターしかいないのです。客も誰もいませんでした。

 

コーヒーを飲み干し、マスターに変わった動きがないか、チラチラと見ながら、水をちびちび飲んで時間を潰しました。

文庫本を読んでいるふりをして、1時間半くらい粘りました。

 

 

そうか、今日は運が悪い日か。

 

 

諦めて、代金を支払って店を出ました。

 

500円くらいでした



2回目

 

次に行ったのは、二日後の午後でした。

 

同じように迎えてくれたマスター。

 

今日も奥さんはいません。お客もいません。

 

またブレンドコーヒーを頼みました。

2回目のブレンド。

なんだかやけに薄く感じました。

 

薄いのは気のせいか

 

 

今日はもう少し待ってみようと、二杯目を頼みました。

ブレンドおかわりでは、なんだか芸がないかな、と思って、

メニューを見て、なんとなく「モカ」を選びました。

 

○ーティワンアイスクリームのジャモカアーモンドファッジというアイスを連想したからでした。

違いがわからない



 

ブレンドと同じ味に思えました。

カウンターからマスターの期待に満ちた視線を感じ、味わっている風を装ってみたりしました。

 

 

今日も運が悪い日か

 

 

すごすごと帰りました。

 

二杯なので、1000円くらいでした。



3回目

 

五日後くらいだったと思います。

 

流石に日も空けずに来れば、マスターも気安い雰囲気を醸し出すようになりました。

 

わたしとマスターしかいない静かな店内で、コーヒーを頼む。

 

どちらからともなく、会話が始まりました。

 

マスターは東京でコーヒーの修行をしてきたこと。

なのでコーヒーには自信があるのだ、と話す顔つきは少し誇らしげでした。

 

確かサイフォンも置いてありました

 

マスターは気をよくしたのか、

「これはわたしからのサービス。飲んでみて」と淹れたての一杯を持ってきてくれました。

 

また、期待に満ちた目。

 

「どう?」

 

「はい…いい香りですね」(としか言いようがない)

「でしょう。キリマンジャロですよ」

「そうですかあ。いやすごいなあ」(マスター、早く向こうに行ってくれ)

 

 

その日も、運の悪い日でした。

 

 

 

 

4回目

 

ブレンドを持ってきてくれたとき、思い切って聞きました。

 

「あのう、奥様がいらっしゃると聞いたのですが」

 

マスターはちょっと驚いたふう。

 

「あ、そう。うちの、ね。今日はいないのよ」

 

「そうですか…」

 

「悪いね」

 

「いえ」

 

今日も運が悪い日か。

 

今日も会えないか

 

これだけ通ってもダメってことは、もうマスターに事情を話して会えるようにしてもらおう。

 

 

ちょうどその時、お客がひとり入ってきました。

マスターと年が変わらない感じの男性。

近所の常連さんのようでした。

 

 

 

その人はカウンター横のテーブルに腰を下ろして、口を開きました。

「実はさ、今さっき、連絡があって…。婿がね、事故に遭って」

マスター「ええ?」

客「勤めてる工場でさ、なんだか事故があって…よくわかんないんだけどさ、どうもダメだったみたいなんだよね…」

 

マスター絶句。「本当に?」

 

わたしもあまりの話に驚き、気持ちが動転しました。

 

これは長居はできない、と急いで会計をすまして、外に出ました。

 

いやー大変なことが起きたんだ。そのお婿さんという人は大丈夫だろうか

 

と胸が痛くなりました。

 

 

 

祠(ほこら)

 

ふと目をやると、店の外の左奥に、小さな祠があることに気づきました。

 

もっと古くて、崩れていました

 

 

あれ?こんなもの、あったかしら?

 

祠はいかにも年季がいっており、崩れかけていました。

斜めになった扉の向こうを覗くと、小さな地蔵か仏像のようなものが、これまた斜めに横倒しになりそうな格好で置かれていました。

 

像の手前には、お供えものなのか、ハルジオンなどの野の草が置かれていました。

 

ハルジオン。わたしが子どもの頃は「びんぼう草」と呼ばれていました。

 

花の周囲には、小さな人形が数えきれないほど置かれていました。

ぬいぐるみっぽいもの、日本人形っぽいもの、フランス人形っぽいもの。大きさは親指から手のひら大くらいと様々で、みな古く、薄汚れていたり、目が消えていたりしています。お人形たちが使いそうなままごと道具も置かれていました。

 

可愛いけど、古いのがたくさんあると怖い

 

そして、祠からは周囲の木にかけて細い縄のようなものが何本か渡してありました。

縄からは、いろとりどりの玉のようなものがぶら下がっていました。

満艦飾のような有様でした。

 

満艦飾

 

その光景は、綺麗とか、可愛いとかいうものではありません。

 

ひたすら不思議…というか、

 

 

はっきり言えば、不気味でした。

 

 

夕暮れどきだったせいもあるかもしれません。

 

 

なんだろうか。これは。

 

前からあったんだろうか。

 

こんなに変わったものがあったのなら、これまでに気づいたはず。

 

どうして、気づかなかったんだろうか。

 

 

 

さっき聞いた事故の話もあって、背筋に冷たいものが通りました。

 

 

5回目

 

なんとも言えない感じを受けた前回でした。

 

理由ははっきりしないけど、どこか薄気味悪い。

 

事故に遭われた方は気の毒だし、あのお客さんもあの後どうしたのか気になる。

 

でも、でも。

 

なんというか、とにかくあの空間は不気味でした。

 

そもそも、最後に見たあの祠。

 

果たして、あれは現実なんだろうか。

夢?マボロシ?

 

お客さんの話を聞いたせいで見た白昼夢だったのかもしれない。

 

多分あったと思う



あの日見た祠が本当にあるのか、それを確かめたい気持ちもあり、店に向かいました。

 

 

果たして祠はありました。

変な装飾もそのまま。

 

ですが、今日は昼間だったからでしょうか。

前回とは違い、不気味さはありませんでした。

 

古い壊れかけた祠に、人形たちとボンボン飾り。

 

むしろ、なんだか滑稽に見えました。

 

 

なんだ。怖がることなんて何もないじゃない?

 

 

胸をなでおろしました。

 

 

それにしても、誰がお供えしてるのだろうか…

 

 

まあ、それは別にいいとして。

 

今日こそは奥さんに会えるかもしれない。

 

 

そして、この日。

会えた!



つづきます

 

ここまで書いてきて疲れてしまったので、続きはまた次回にします。

よろしければ、またいらしてくださいね。

 

 

読んでいただき、ありがとうございました。

 

笑い話のつもりが、怪談になってきてしまいました