ぴあけあら

双極症当事者(ピア)で、統合失調症の当事者家族(ケアラー)。日々の記録です。

 本サイトはプロモーションが含まれています

カウンセラーで生計は立てられるか

 

 

まえに、このブログで「カウンセラーになりたいなら 臨床心理士資格はとったほうがいい」という記事を書きました。

 

 

peer-carer.hatenablog.com

 

 

カウンセラーになるには、臨床心理士の資格があると、たいへん有利です。

 

 

実際に、臨床心理士の雇用と収入はどうなっているのか、お話しします。

この話から、カウンセラーの実態も見えてくると思います。

 

 

臨床心理士資格をとるかどうか

カウンセラーになるかどうか

 

迷っている方々の参考になりましたら、嬉しいです。

 

 

病院以外ではカウンセラーは白衣は着ません

 

 

 

わたしが知っている臨床心理士たち

 

実際にわたしの身近な臨床心理士たちの仕事をあげます。

あくまで、わたしの周囲の人たちですので、他の仕事についている方もいると思います。

 

 

 

常勤職員になった臨床心理士たち

 

・法務省矯正心理専門官(少年院などでの心理検査員)

 

・法務省保護監察官(保護観察となった少年、成人の支援)

 

・家庭裁判所調査官

 

・地方公務員上級心理職(児童相談所、精神保健センターを異動)

 

・大学教員(論文を書いて、研究実績を積み重ねて、大学助手になり、正規教員の求人に応募する。狭き門。早くて30代。それまでは非常勤で食いつなぐ。カウンセラー業よりも研究寄り)

 

・一般企業の健康保健センター(これは例外。教授のコネ。この人は、教授のお気に入りになるために、えげつないことをして就職)

 

 

研究して大学教員に



 

臨床心理士はほぼ非常勤職員

 

常勤の採用枠はまず見つかりません。

なので、非常勤職に就きます。

 

 

大学教員を目指すひとたちも、最初は非常勤職に就きながらやっていました。

非常勤とは、パート職のことです。

 

 

・心療内科、精神科病院

 

・小児科病院の発達外来

 

・脳外科など、障害児者のリハビリセンター

 

認知症の検査をすることもあります。

 

 

・児童相談所(非常勤職。療育手帳の心理判定担当)

 

・市町役場の健康課、子ども課

 

・教育相談センター

 

・教育委員会の特別支援教育相談員

 

・発達支援センター

 

・スクールカウンセラー

 

・企業の産業カウンセリング室

 

・私設カウンセリングルーム(リアルあるいはオンラインの登録制)

 

 

オンラインカウンセリング



 

多くのひとが 複数をかけ持ちしていました。

 

例をあげると、

 

 

月曜日 A病院精神科外来

火曜日 B精神病院

水曜日 A病院精神科外来

木曜日 B精神病院

金曜日 B精神病院 夜Cクリニック

土曜日 Cクリニック(午前)

 

 

曜日によって勤務先が変わります。夜間のクリニックも入れたりもします。

 

 

今日はこっち、明日はあっち…

 



臨床心理士だったわたしの場合

 

 

専門は子どもの発達でしたので、その関連の仕事をすることにしました。

常勤職は枠自体がありませんでした。

なので、非常勤職を掛け持ちすることになりました。

 

 

仕事内容は

 

・子どもの様子を観察して検査する

・親御さんから日頃の様子を聞く、心配なことなどをうかがう

・発達に支援が必要な状態であるかを判断する

・親御さんの心配が解決できるよう話し合い、今後の方針を一緒に考えていく

 

 

専門知識、技術、経験が必要で、神経も使う仕事でした。

 

 

 

子どもさんはみんなかわいかったです。

 


収入は、

 

市町の乳幼児発達相談員 月25,000円。

児童相談所の心理判定員 月32,000円。

発達障害児療育相談員 月15,000円。

 

 

月収は7万円〜8万円くらいでした。

 

 

 

 

待遇についてのわたしの疑問

 

 

わたしは、半日に4〜5組の親子の相談を受けていました。

 

半日で五千円ですから、換算すると、

一組の親子につき1,000円の相談料です(役場の事業ですから、クライアントは無料です)。

 

生きていくのに、ある程度のお金は必要です。

 

 

「時給1,000円は最低賃金を超えてるし、まあパートとしてはいいほうでしょう?」

という見方もあると思います。

 

 

ですが、仕事の内容を考えると、

専門性が高く、親子の人生に関わるかもしれない仕事です。

 

 

わたしがケチかどうかについては、ひとまず置いておいておきますね。

 

 

カウンセリングに対する社会の評価

 

 

臨床心理士は人助けのボランティアではありません。仕事です。

 

 

臨床心理士は、

 

 

知識と技術と経験が必要で、ひとの人生にかかわるかもしれない、誰にでもできるわけではない仕事

 

 

をしています。

 

そのために資格を取っています。

 

 

最近、カウンセリングのニーズは高まっていると思いますが、社会全般では

 

 

「生きていく上で、カウンセリングは必要というわけではない」

 

 

と認識されているのだと思います。

 

不要

 

カウンセリングは、生存そのものに直結するものではなく、生活の質を上げるためのものだからです。

 

 

だから、臨床心理士の待遇は良くない。

 

 

待遇は、社会におけるその仕事の価値と言えます。

 

 

臨床心理士の労働状況は、カウンセリングに対する社会の評価の低さに、理由があると思います。

 

 

「どんな仕事だって大変なんだ、そんなものなんだ」と言われたら、ぐうの根も出ませんが…

 

 

まあ、そうなんですけどね…



 

 

 

臨床心理士のランニングコストについて

 

 

臨床心理士になると、日々自分を磨いていかなければなりません。

業務の厳しさと、そうせざるをえない事情があるからです。

 

ひとつひとつ説明していこうと思います。

 

 

カウンセリング業務は過酷である

 

カウンセリングはクライアントの心に直接働きかける作業です。

 

カウンセリングをしているときは、クライアントの心だけではなく、カウンセラー自身の心も扱います。

 

自分の心を常にコントロールしてクライアントに向かわないと、クライアントの心を適切に扱えないからです。

 

心を扱うのは大変難しく、怖い仕事でもあります。消耗も激しいです。

 

 



臨床心理士の研鑽

 

難しく過酷な仕事をするために、臨床心理士は、知識と技術を常にバージョンアップさせていかなければなりません。

 

そうしないと、クライアントもカウンセラーも壊れてしまうからです。

 

臨床心理士がする日ごろの勉強は

 

①本や論文に目を通す(専門書は図書館にないので買う。専門性が高いもの、海外のものは一冊一万円前後)


②研修会、学会に参加(最近はオンライン。休日開催)


③スーパーバイズ(指導)を受ける(一回15,000円以上)

 

④セルフケアとして、自らカウンセリングを受ける(一回8,000円〜1万円くらい)

日々べんきょう



 

③④までするひとは多くはないかもしれません。

いいカウンセラーになりたいと思うのであれば、これらの研鑽をしていく必要があります。

 

 

臨床心理士は資格更新制

 

臨床心理士は日々バージョンアップが必要です。

 

臨床心理士会の偉い人たちは、②研修会、学会の参加 を義務としています。

 

 

臨床心理士は 合格して終わりではありません。

 

 

資格更新制なのです。

 

 

あ、そう。更新制ね…



 

更新は5年ごと。

 

5年間のあいだに、規定の研修や学会に規定の回数以上出席しないと 更新ができない仕組みになっています。

 

研修を受けて更新しないと資格は抹消されてしまいます。

 

 

 

研鑽は不可欠ではあるが…

 

臨床心理士会の偉い人たちは、

 

「臨床心理士は恒常的に研鑽を行うから、臨床心理士の資格がペーパー化せず、質が保たれるし、ひとりひとりが強い自覚と責任を持ってやっていける。だから研修受講は義務だ」

 

と説明しています。

 

それって、あなたの理想ですよね

 

ごもっともです。

 

ですが…

 

「あなたたちは大学の先生やってて、生活が安定しているから、そんなことを言えるよね」

 

 

と末端の心理士であるわたしは思っていました。

 

あなたたちはいいよね

 

 

受けなければいけない研修は、どれでもいいわけではありません。

偏らず広く全領域にわたるようにバランスよく受けなければ認められません。

費用も時間の調整も必要になります。

 

生活もカツカツのなか、家庭、育児、介護を抱え、義務化されている研修をこなすのは、時間も、労力も、お金も、大変です。

 

 

たしかに、研鑽は必要です。

 

 

ですが、待遇とのバランスがあまりに悪いのです。

 

 

バランス

 

 

 

さらにお金は吸い取られる

 

臨床心理士でい続けるためには、研修以外にも定常的にお金がかかります。

 

臨床心理士会

心理臨床学会

所属する都道府県の臨床心理士会

 

に、それぞれ会費を毎年払い続けなければなりません。

 

 

会費を滞納すると、資格更新はできません。

 

 

さらに5年の更新のたびに更新料がかかります。

 

 

これらは、臨床心理士というタイトルを使わせてもらうための、いわば上納金といえます。

 

 

うーん

 

医師会や弁護士会なども、会費を払っていると思います。

でも、お医者さん、弁護士さんは、きっとそれなりにお給料いいはず。

 

それに比べて臨床心理士は、毎日の生活に困っているひとも多い。

 

医師会などと、同じシステムではやるのは無理なのではないかと思ってしまいます。

 

 

雇用も収入もなく、資格を持っているだけで、どんどんお金が減っていく。

 

 

それが臨床心理士です。

 

さようなら



 

お金は臨床心理士会に

 

臨床心理士の研修は、臨床心理士会が用意したラインナップですから、研修の参加費の支払い先はすべて臨床心理士会です。

 

絶対に入会しなければならない心理臨床学会は、臨床心理士会の母体です。

 

そして、会費、更新料はすべて臨床心理士会に払います。

 

 

つまり、わたしたちが日々やっとの思いで稼いだお金

 

研修費

学会費

会費

更新料

 

は、すべて臨床心理士会にいく仕組みになっています。

 

さようなら

 

わたしたちは、会から与えられている資格のおかげで仕事を得ているわけですから、当然なのかもしれません。

 

 

ですが、収支のバランスがあまりに悪い。

 

 

臨床心理士会に搾取されているような感覚すらありました。

 

なにかおかしくないですかね?



 

 

苦労する臨床心理士たち

 

多くの臨床心理士たちは、非常勤心理職をかけもちし、低待遇の中で経費を払い続けています。

 

 

 

生きていくために副業

 

わたしの周囲の臨床心理士は、経費を払い、生計を立てるために、みな副業していました。

 

 

・高校、大学、短大、専門学校の非常勤講師

 

・塾、予備校の先生、家庭教師

 

・ヘルパー、児童養護施設など福祉施設の職員(心理職ではなく)

 

・研究室でのパソコンの管理

 

・通訳(帰国子女の人)

 

・ギター教室の先生(趣味が高じて)

 

 

・引っ越し業者

 

・清掃

 

・飲食店

 

・夜間工事現場の警備

 

 

一番多いのは先生の仕事です。

大学の心理学系の授業は多いので、常勤教員がいないと、非常勤として採用してもらえます。

 

わたしも、短大、専門学校の非常勤講師をやっていました。

 

 

教えるのは楽しかったです

 

 

 

 

副業でも食べていけないので

 

カウンセラーを本業として、ずっと続けているひとは多くありません。

 

若いうちはいいのです。

情熱を持って、非常勤職と他の仕事を掛け持ちして頑張れます。

わたしもそうでした。

 

ですが、だんだん生活に疲れてきます。

仕事はきつく、収入は安く、雇用は安定しない。コストもかかる。

家庭を持つと特に続けることは難しくなります。

 

しんどいなあ



 

 

非常勤時代を越えるか、そのままか、脱落するか

 

不遇の非常勤時代を越えて、心理職の常勤に採用されたり、大学教員になった人もいます。ですが、それは臨床心理士たちの一部です。

 

それまでのあいだに脱落していく人たちが多いです。

 

 

たそがれ

 

奥さんが支えてきたけれど、これ以上苦労はかけられないと、業界からきっぱり足を洗った人もいます。

 

その一方、長く非常勤で頑張っている臨床心理士たちもいます。

 

彼らは

 

・実家からのサポートがある

・結婚して配偶者の収入でやっている

 

のどちらかです。

 

基本的に、臨床心理士は、生活に余裕があるひとでないと長くはやっていけない

 

と思います。

 

大学の先生か、生活に困っていないひと

 

 

わたしが、臨床心理士を辞めた理由

 

わたしは、家族がメンタルの病気になり、ケアが必要になりました。

臨床心理士の資格を維持するのであれば、時間もコストもかかります。

両方を天秤にかけて、資格を更新しないことを選択しました。

 

 

それでも、臨床心理士になってよかった

 

それでも、わたしは、臨床心理士の資格をとってよかった と思っています。

 

 

 

子どもの頃からカウンセリングの仕事にあこがれて、

臨床心理士資格をとったことで、カウンセラーの仕事を得られたからです。

 

 

臨床心理士になったことは後悔していません。やめたことは残念ですが、協力してくれた家族にはとても感謝しています。

 

そして、当事者になり、当事者家族になった今、現役時代の経験と知識が役に立っています。

よかった



 

 

 

 

最後に。

 

臨床心理士の実際について、夢のないお話をしてしまいました。

臨床心理士とカウンセラーを志す方々に、元臨床心理士の立場からお伝えしたいことがあります。

 

 

臨床心理士とカウンセラーを志す方へ

 

これから大学進学を考えている方々と、セカンドキャリアを考えている方々、それぞれに分けて、お話しします。

 

 

 

これから進路を選択しようという若い方々へ

 

 

・大学、大学院の学費問題がクリアできるか、おうちの方と相談してください。臨床心理士では、奨学金の返済は無理と考えてください。

 

・資格をとっても、仕事はすぐにはないことを覚悟してください。

 

臨床心理士のランニングコストを背負い続けることを覚えておいてください。

 

・やりがいはありますが、心身の負担が大きく、楽な仕事ではありません。タフさが必要です。

 

ひとに寄り添う仕事は、カウンセラーだけではありません。

カウンセラー以外にも、対人援助職は、医療、福祉、教育分野にたくさんあります。

視野を広く持って、いろいろな仕事の情報を仕入れてください。





セカンドキャリアとして、臨床心理士、カウンセラーを考えている方々へ

 

 

これまで別の領域で活躍されてきた方から

 

「第二の人生をカウンセラーとしてやっていきたい」という相談をよく受けます。

 

一般の企業で働いてきた方や、家庭業に専念してきた方々です。

 

「カウンセラーになるには、臨床心理士ですよね?」と皆さんおっしゃいます。

 



これまでお話しましたように、臨床心理士になるまでの、時間、労力、お金のハードルは高いです。

 

資格をとったあとも収入の苦労があり、ランニングコストも高額です。

 

 

それらを吟味して、臨床心理士の資格をとるのが自分に必要なのか、を考えて選択することをおすすめします。

 

 

「仕事になるかどうかは関係なく、臨床心理士になるのが夢だ」と大学受験からスタートした方もいます。そういう選択もアリだと思います。

 

チャレンジ!

 

 

 

生活が苦しくても、カウンセラーになりたいならば

 

 

カウンセラーを志したとき、たしかに、臨床心理士の資格は最強です。

 

 

「カウンセラーの仕事をしたい。非常勤で収入が低くても構わない」と考えるならば、臨床心理士の資格をとることをおすすめします。

 

 

カウンセラーになるには、臨床心理士になるのが近道だからです。

 

「カウンセラーになりたいんです」

 

 

「カウンセラーになりたいけれど、安定した生活を送りたい」

と思うならば、本当にカウンセラーを志すか、もう一度よく考えてください。

 

夢ではなく、将来を考える



 

それでも、カウンセラーになりたい人への応援歌

 

 

カウンセラーは、クライアントが自分で自分の幸せを見つけるまでの、伴走者であり、応援者だと思います。

 

カウンセリングは素敵な仕事だと思います

 

人を幸せにしてあげるという上から目線のものではないし、カウンセラー自身の自己実現の手段でもありません。

 

 

大変ですが、人の役に立てる仕事です。

 

 

ですから、わたしは、カウンセラーになりたいという方々を応援したいです。

 

 

では、カウンセリングを仕事にしたいと思ったとき、どうしたらいいのか。

 

実はいまの段階では、わたしには答えが出ません。

 

どういうやり方があるのだろう

 

これから、勉強し、考えて、カウンセリング業界の動きも注視しながら、このブログで発信していきたいです。

 

そのときにはまたお付き合いくださると嬉しいです。

 

 

次は、楽しい記事になるようにがんばります。

 

 

 

読んでくださりありがとうございました。おわり。

 

 

ありがとうございました