こんにちは。
うつ当事者で、統合失調症の家族をケアしていますピケといいます。
先日、古くからの友人Aくんが、メンタルで調子を崩して休職した、と聞きました。
わたしはかなり驚きました。
だって、Aくんは、社交的で明るくて、いい加減で(いい意味で)、要領もよくて(いい意味で)、どんなところでもスルスルとうなぎみたいにうまくやっていく(いい意味で)人なのです。
メンタルの病気を語るときに、必ず言われるのが「病前性格」ってやつです。
うつになりやすい性格、双極性障害になりやすい性格、統合失調症になりやすい性格…
有名なのが、うつの病前性格ですね。
真面目、几帳面、完璧主義、責任感が強い、人に気をつかう、とかでしょうかね。
家族や知人が不調になると、「やっぱりね」なんて言ったりします。
でもねー これってどうなんでしょう?
さっきのAくんは、メンタルの病前性格とは一致しないんですよね。
わたしとかには見せない、すごく真面目な部分とかすごく完璧主義な部分とかが彼には実はあって、それで調子を崩したのかもしれない…って考えることもできないわけじゃないけど、
それってかなり無理があるんじゃないか と思うのです。
以前やっぱり調子を崩したひとがいて、その人は、はたからみるとフニャフニャしたひとでした。
そのひとのことを「ああ見えて、真面目な性格だったのよね」ととってつけて噂してる人がいましてね。
「おいおい違うんじゃないか」と思ったことがあります。
病前性格の研究はギリシャ時代からあります。
日本では1930年代くらいから有名な先生の研究で盛んになりました。
当時は、医師が診断をするときに、「もともと真面目なひと」となると、うつ病診断の裏づけのひとつになる、という意味もあったようです。
つまり、「病気からさかのぼっての性格」という考え方だったのですよね。
ですが、最近の病前性格というのは、「性格から病気を予測する」という方向性に誤解されています。
本来の研究とは、違うのですよね。
いまも病前性格の研究はされていますが、一時期医学界を席巻したほどの盛り上がりはありません。その代わり、遺伝子レベルの研究が盛んにされています。
病前性格の研究の内容は、もっと複雑です。
メンタル不調を引き起こすのは、環境要因、引き金になるストレス、ライフイベントの負荷、遺伝要因も大きい。
性格だと思っていたけれど、実はもう症状が出ていた、っていうケースもあります(思春期からすでに病気だったというケースは実は多い)。
そうなると性格なのか症状なのか、それすら区別が難しい。
さらに、研究者たちが議論している性格というのは、「ナントカ気質」という用語を使っていて、理解するには勉強がいりそうです。
「真面目」「几帳面」などといった単純な切り口ではないのです。
今ネットでもたくさん書かれている病前性格の説明は、わたしからすると、本来の内容がかなり端折られていて、誤解されやすい表現がされています。
単純で、わかりやすく、受け入れやすい図式は、決めつけになり、不要な自己責任論を生んでいます。
「病気になりやすい性格を直さなくちゃ」「直させなくちゃ」ということになります。
「病気になったのは、本人の性格に原因がある」と、切り捨てる口実にもされます。
そもそも、こんなにストレスフルな社会で、メンタル不調に一回もならずに生涯を終える人がいたならば、それはもうよっぽどのラッキーです。
家族、周囲にも誰もいないなんてことは奇跡ですよ。すごいことです。
メンタルの病気になるかどうかが、性格で決まるなんてこと、メンタルの病はそんなに簡単ではありません。
複雑怪奇な病気なのです。
ある精神科の先生のブログを引用しますね。
病前性格を考える意義
前述したように、病前性格と病気の発症や経過に因果関係があれば、病前性格を考慮する意味はありますが、最近の知見からはあまり重視する必要は無さそうです。
また、
「性格も一因となって双極症が発症したのか?」
と考えることは、罪悪感、自責感につながりかねません。
双極症の家族に発揚気質の人が多いとの報告もあり、遺伝的な素因が性格が影響し、それが発症に影響する可能性も無いとは言い切れませんが、
「病前性格って言われてるけど、あんま関係ないみたいだな」
くらいに認識してもらえると良いかと思います。
双極症の「病前性格」って何?実は世界的には…。日本での最近の動向も説明。 | 兵庫県三田市の心療内科・精神科ならさくらこころのクリニックへ
この記事では双極症(双極性障害)について書かれていますが、どんなメンタルの病気にもあてはまると思いますよ〜
読んでくださり、ありがとうございました!
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