岡檀(おか まゆみ)さんの『生き心地の良い町〜この自殺率の低さには理由がある〜』を読みました。
1時間半ほどで読めてしまうくらいコンパクトなのに、読み応えのある一冊でした。
自殺希少地域である旧海部町(徳島県)について、自殺「危険」因子ではなく、自殺「予防」因子を探った研究が記されています。
調査の結果、次の5つの要素を自殺予防因子として挙げられています(p.94より)
●いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
●人物本位主義を貫く≪年功、出自、財力、学歴よりもその人を重視≫
●どうせ自分なんて、と考えない≪自己効力感、自己信頼感≫
●病、市にだせ(やまい、いちにだせ)≪「でけんことはでけん、と早う言いなさい」≫
●ゆるやかにつながる≪助け合うけれど、執着はしない、淡白≫
≪≫内は、わたしの補足です。
その他にも
●説教、強制はしない(「(言う通りにさせるなんて)そんな野暮なことはせん」)
これを、わたしにとって馴染みのある言葉に変換すると
●いろんな人がいたほうがよい→「多様性」
●その人自身を見る→「対等性」
●自己信頼感→自分で現状を解決できるという感覚(自分が誰かに尊重されることで生まれる)
●できないことはできない、と言う→弱さの情報公開
●ゆるやかなつながり→人間関係が膠着しないから、逃げ場、余白がある
うーむ
メンタルケア手法の、オープンダイアローグ、対話、当事者研究に通じるなあ〜
そして、興味深かったのは、
「旧海部町は、周辺地域と比べて、「幸せ」と感じている人の割合が最も低い」
ということです。
自殺希少というと、幸せな人が多い というイメージですよね。
ですが、旧海部町の場合はそうではなく、
「幸せでも不幸せでもない」
と答える人の割合が、他の地域と比べて一番多かったそうです。
”「ほれが(幸せでも不幸せでもないという状態が)自分にとって一番ちょうどええ、と思とんのとちゃいますか」そう言った人がいた。ー略ー「それが一番心地がええ、とでもゆうか」と言い足した。“
”なるほど。この人たちの言いたいことが、ぼんやりとであるが伝わってきた。「不幸せ」という状況に陥りたくない人は多いだろうが、では「幸せ」ならよいのかというと、考えようによってはさほど結構な状況でもないのかもしれない。「幸せでも不幸せでもない」という状況にとどまっていれば、少なくとも幸せな状態から転落する不安におびえることもない。“
「幸せでも不幸せでもないという状態が、一番心地がいい」
深く心に残った一文でした。
話は変わりますが、メンタルケア系の無料zoom対話会とLINEオープンチャットをやっています。大盛況というわけでもなく、どなたもいない、というわけでもなく、ぼちぼち、ゆるゆるちょうどええ という感じでやっています。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!